歴史上最古の王国,アリアバート。
樹上世界『ベルアイル』の北西に白亜の都を築き,魔術と文化の国として知られている。
何事もなく時が過ぎていくかのような,この美しいアリアバートの都から,ある奇妙な噂が流れるようになった。
アリアバートでも名の通った熟練の剣士が,未知の魔物に襲われた。反撃することもままならず,逃亡するしかなかった,というものだ。命からがらアリアバートへ辿り着き,病院で治療を受けた彼の口からは,驚くべき情報がもたらされたという。
「俺は何かお宝が残されてないものかと,一人で平原をさまよっていたんだ。そう,何百年も前に滅んだという,あの古代アリアバートの財宝だ。そこで俺は突然,今まで見たこともないバケモノに襲われた。ブヨブヨした気味の悪い怪物だった。俺は愛剣をヤツに振り下ろしたが,アイツは大してひるんだ様子がなかった。しかも気づかないうちに,俺の装備が溶け出していたんだ。」

この未知の魔物の噂は,三国を行き交う旅人たちによって,ボーダーやカルガレオンといった国々へも流れて行った。
その謎を解明するために冒険者は大地を駆け回り,未知の情報を求めて旅人は各国へ足を運び,新たな冒険の始まりを敏感に感じ取った行商人は仕入れ量を増やし,注文の増えた職人は材料集めに奔走した。
そしてついに,古代の書物を紐解いたアリアバートの学者によって,一つの興味深い文献の存在が明らかになった。それによると,奇妙な魔物は,人間でもエルフでも,デモニカでもない種族「有角族」が魔力により創り出した魔物であるという。
「有角族」とは,人間とデモニカ,それぞれの繁栄具合によって容姿や人格が変貌する性質を持つ。人間が繁栄すれば姿は人間に近く性格も温厚だが,デモニカが繁栄すると人間に対し殺意を抱くようになり,以前の記憶も曖昧になってしまう。これは,デモニカたちが人間に対して抱いている感情が流れ込むためだという。

エルフ以上に長命で,高い魔力と優れた身体能力を兼ね備える「有角族」は,自らの性格の変貌により,他の種族と争いが起こることを恐れた。そのため彼らは人間と距離を置くようになり,人の住処とは遠く離れた場所に集落を作っているという。
古代の文献から得られたこれらの知識に触発され,さらなる手がかりを得ようとする『ベルアイル』の住人たち。ある者は古代の財宝を求めて,ある者は「有角族」の隠れ処を求めて,そしてある者は,ただ自らの名声を高めようとして。
しかし依然として,その謎を解き明かす手がかりを見出した者は現れていない。あの奇妙な魔物と遭遇する者は,日々増えていくにも関わらず……。 |