古びた、しかし一寸のゆがみもなく垂直に切り立った石壁に映るドワーフたちの影が、大きくゆらめいた。新たに一人のドワーフが部屋に入ってきた際に、ランプの炎が傾いたためだ。
「これで、三名の“使者”が揃ったな」
ドワーフの語部は頷きながら、他の三名の顔を見回した。
「我らは決断した。樹上世界で力を蓄えつつある人間に、我らがこれまで研究を重ね、蓄えてきた知識の一部を与える。そして、デモニカ根絶のために協力させる、と。
確かに人間たちは、愚かで無能、歴史浅く、同族同士のいさかいが絶えぬ。しかし、幾度に及ぶデモニカの大襲撃を耐え忍んだ強靭さと、歴史と共に文明を発展させていく成長力には、我らとて舌を巻かざるをえん」
言い終わると、語部は、“使者”たちの顔を順番に指差しながら、さらに言葉を続けた。
「お主たちは、“使者”じゃ。この書簡を携え人間の国へ赴き、ドワーフの“使者”として各国の王に我らの言葉を伝えよ」
そうして語部は、“使者”の一人一人に、蝋で厳重に封印された書簡を手渡していった。封印にはそれぞれ、炎、大地、氷の紋章が刻まれていた。
「我らは地上世界を取り戻し、デモニカを絶滅させるために、一族で最も勇敢なお主たちが選ばれたのじゃ。英雄ロックボムと同じ血が流れる我らの誇りにかけ、必ずや任務を果たせ!」
そして、ドワーフ族の未来を託された三人の“使者”たちは固い表情で頷くと、意を決したように小部屋から退出していった。まるで、死地へ赴く兵士たちのように。
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