2007年08月08日 15:00 地上世界物語【第3回】虹の旅団(1)
 

ボーダー王 「ねえねえ、おじさん。ドワーフってもう見た?」
歳の頃はボーダーの初等学校を卒業したばかりだろうか、無邪気に目を輝かせた男の子が、初老の男を見上げて話しかけた。ローブを着込んだ男の手には、奇妙な形をした大振りの錫杖が握られている。

「ドワーフ、か……。ああ、見たよ。お城でな」
柔和な笑顔を浮かべた初老の男は、ゆっくりと、しかし少年にもよく聞こえるようにはっきりと応じた。

「すごーい! ドワーフってどんなの? 王様より強い?」
こぼれるような笑みを浮かべて、少年は素朴な質問を重ねた。細い腕に、「紅蓮の剣戟」と記された本を大事そうに抱えていた。

「ドワーフの話が聞きたいのかね、少年。その本を持っているということは、ボーダー王に憧れておるのだな。よし、少しだけ、ドワーフとボーダー王の話をしてあげよう」

一層瞳を輝かせ、大きくうなずいた少年は、両手で本を抱え、男の話を待った。

「その昔、ボーダー王が率いる“虹の旅団”という7人の冒険者集団があった。
人間だけではなく、ロックボムというドワーフが1人、ダムウという獣人1人も仲間におった。

彼らは、人々の安全を守り、生活域を広げるため、このオールドマンズ大湿地に棲む竜を倒しておった。
そしてついにオールドマンズ大湿地の竜をすべて倒した“虹の旅団”は、最後の竜を倒すために“リザーズエッグ”へ潜った。そう、ここボーダー王国からそれほど遠くはない洞窟だ。

最後の竜は、邪な気配を漂わせる巨大な扉を守っておった。
いや、今にして思えば、扉の奥に潜む邪悪な存在から、この樹上世界を守っておったのかもしれぬ……。

最後の竜との戦いは壮絶だった。
人間、ドワーフ、獣人の英傑で構成される7人のうち、3人までもが命を落としたのだから」

暗くよどんだ空を見上げると、男はそこで言葉を切った。

 


次回の物語:地上世界物語【第3回】虹の旅団(1)
前回の物語:地上世界物語【第2回】老いの呪い(2)

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