「ウキョウ様はね」
明るく柔らかな照明の光が白い土壁に反射する、ここはアリアバートの初等学校の教室だった。
大きな木製の机が並べられた教室では、数名の少年少女が椅子に座り、授業を聞いていた。
生徒たちは皆、青緑色の生地で上品に仕立てられた制服を着用している。
「よくないことをいう人もいるけれど、実は、ここアリアバート王国の発展に最も尽くした一人なの」
教育メガネを掛けた黒髪の若い女性が、黒板に文字を記しながら話を続ける。
手に持つ教科書の表紙には“アリアバートのれきし”と記されている。
「よくないことって?」
おとなしく教師の話を聞いていた少年が、聞きなれない言葉に首を傾げた。
「人には分からないように悪いことをしながら、この国を自分のものにしてしまおうとしている、なんて噂する人もいるみたいね。
でも、覚えておいて。ウキョウ様はそんな方ではないわ。」
「じゃあ、どんな人ー?」
ショートカットで青髪の少女が、片手を高く上げながら質問を発した。
「いい? これからウキョウ様のことを話すわね。ほら、手を動かしている人は止めて、よく先生の話を聞きなさい。
ウキョウ様が生まれたのは、いまから1000年以上も前のこと。この前に話した、“地上世界”でね。
そして、ウキョウ様はエルフという種族だから、永く永く生きていられるのよ。
その頃、“地上世界”には“デモニカ”という怖い怖い魔物が出るようになっていた」
「知ってるー! お父さんがこの前、アリアバートの外でやっつけた、っていってたよ!」
「ダンテ君のお父さんは強いわね! デモニカをやっつけるなんて」
教師が手を叩きながら少年の父親を称えた。
「でね、私たち人間のご先祖様と、エルフ、ドワーフ、巨人族たちは、一緒にデモニカから世界を守ろうと戦っていたの。
でも、ある時、デモニカの大軍が人々の街やお城を一斉に攻撃してきた。
皆、街から逃げ出してエルフの森へ隠れ込んだの。
それからどうすれば良いのか、人間の王様たち、エルフの長老様たち、巨人族の長たちが集まって、話し合ったのね。そこには、ウキョウ様のお父様もいたわ」
教師は黒板の前に据え置かれた椅子に腰掛け、歴史の教科書をひざに乗せて、ページをめくった。
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