「話し合いの結果、魔術を使って、大陸を大きな樹で持ち上げてしまうことになったの。“世界樹のルーン”という、葡萄の形をした禁断の魔石の力を借りて」
「ブドウ、ってなーに?」
教室内で最も小柄の、赤髪でそばかすのある可愛らしい少女が首をかしげた。
「葡萄、っていうのはね……地上世界でしか生えない果物。小さな実が沢山くっついている、甘酸っぱいフルーツよ。食べた人には、永遠の生命と平穏が訪れると言われているわ。
でもね、その“世界樹のルーン”を使うためには、魔力の高い者が、樹の根元で魔力を注ぎ続けなければならなかった。
そうして、選ばれたのが、ウキョウ様のお父様。エルフの中で、一番高い魔力を持っていたからよ」
教師は、整然と並べられた生徒の机の間をゆっくりと歩きながら、歴史の教科書をめくっていく。
「せんせー! ボクのお父さんよりすごいのー?」
ダンテの隣に座っていた双子の弟が、兄と似通った質問を発した。
「キケロ君やダンテ君のお父さんと同じくらい、すごかったのかもね。
だから、ウキョウ様も本当はものすごい力と知恵の持ち主なのかもしれない。
そうして、今、みんなが歩いているこの世界は、樹の上に持ち上げられた。
こうして安心して暮らしていられるのも、巨人族や、ドワーフ族、そしてエルフ族の協力があったからなの。
その意思を引き継いだウキョウ様は、何百年もこのアリアバートの国に仕えて、人間たちを見守ってくださっているのよ。
時には、人間たちの争いに仕方なく参加しなければならなかったこともあるけれど……それは、私たち人間の手で引き起こされたこと。
地上世界での人間や巨人、ドワーフ、そしてエルフのように、みんなで仲良く暮らしていかないとね。
さあ、だから、みんなも大きくなったら、少しでもウキョウ様の力になれるよう、お城へ行って“献上”のお手伝いをしてね」
「はーい!」
教室中の生徒全員が手を高く上げ、同時に、授業の終わりを知らせる鐘が音高く鳴り始めた。
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